- 新人
北川 いちか 33歳
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2024/06/15 21:04定年退職
今日、ちょうど定年退職をむかえた初老の男がひとり、駅前の立ち食い蕎麦屋で一杯の蕎麦を食べている。
海老の天麩羅が一尾乗っかった一杯500円の蕎麦だ。
男は30年も前からほぼ毎日昼休みこの店に通っているが、一度も店員とは話したことがない。
当然、話す理由などもとくにないのだが、今日男は自然に自分と同年齢であろう店主に話しかけていた。
「おやじ、今日俺退職するんだ」
「へぇ…そうかい」
会話はそれで途切れた。
ほかにとくに話題があるわけでもない。
男の退職は、今日が店を訪れる最後の日であることを表していた。
すると突然、男のどんぶりの上に海老の天麩羅がもう一尾乗せられた。
「おやじ、いいのか」
「なーに、気にすんなって」
男は泣きながら蕎麦をたいらげた。
些細な人の温かみに触れただけだが涙が止まらなくなった。
男は退職してからも、この店に通おうと心に決めた。
男は財布から500円玉を取り出して、
「おやじ、お勘定」
「800円」
今日の写真はAI加工したわたしです?
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ichika.